フランジ/ブラケット/テンションフープ/フック/ナット

フランジ

 フランジというのは、つばや 耳のことです。刀の鍔をイメージすると理解しやすいかもしれせん。この画像はポット部分の断面図です。ヘッドがトーンリングの上に乗って、ヘッドの外縁部をテンションフープが押さえつける構造になっています。テンションフープがフックとナットによってフランジ側に引き下げられることで、ヘッドにテンションがかかるわけです。
 これは、バンジョーヘッドがトーンリングに密着することでブリッジに伝わった弦の振動をトーンリングに効率よく伝え、音量を増幅させるのです。
 テンション・フープをフランジ側にフック、ナットで引き下げることで得られるヘッドのテンションはヘッドとトーンリングの密着だけでなく、トーンリングとウッドリムの密着度も促します。
もちろん、ヘッドのテンションはヘッドとその上に乗っているブリッジとの密着度、弦がブリッジに与えるテンションも左右します。
このように考えるとヘッドを張るという調整は、バンジョーの音全体を左右する重要な調整といえるでしょう。

 

 






 このフランジには1ピース・フランジと2ピースフランジがあります。その名の通り、1枚のものと2枚のものということです。1ピ−スフランジにチューブを上に載せ、フックがその両方を貫通する構造になっているものが2ピースフランジです。この画像を見るとフックがチューブを貫通しているのがよくわかります。
 下の画像が1ピースフランジです。フックが板状のフランジまで見えています。またこの画像ではリゾネーターを留めるネジがフランジのところに見ることができます。
 どちらのフランジ良いのか、それぞれどんな音が出るのかははわかりませんが、ブルーグラス・バンジョーを弾く人の多くは1ピース・フランジを好むようです。その理由は音響的な部分もあるのでしょうが、Earl Scruggsの弾いているバンジョーが、ギブソン・フラットヘッド・グラナダ・1ピースフランジであるからでしょう。

 



 フランジの材質はダイキャストが多いです。ダイキャストとは、溶かした合金(アルミニウム、マグネシウム、亜鉛など)を金型の中に高圧を加えて流し込んで作った、いわゆる鋳物だということです。
使われている材質はよくわかりませんが、昔、東海楽器のT-1200Rというバンジョーのカタログにブロンズを使用していると書いてあったような記憶があります。

 フランジの材質、形状、密度によって音に違いがでると思います。それは、バンジョーの音を作りだす部分であるウッドリムに直接触れているだけでなく、弦の音を伝えていくヘッド、トーンリングに間接的に触れてもいるからです。フランジのバンジョーの音に及ぼす影響は少なくないように思えるのですが、バンジョーの音を決定付けるトーンリングやウッドリム、意匠的にも重要な部分を占めるネックなどと違って、フランジに材質や形状が明記されていることは余りなく、またどこのメーカーがどのようなフランジを使っているかもはっきりしません。
 とすると、それほど大きな影響が出ないのかな。でも厚めのブラスで作られたものと薄めの亜鉛合金で作られたものではだいぶ違うような気がするんですけどね。

 



Lブラケット
 フランジは、テンション・フープを引き下げる「留め」になってポット全体を組み上げる機能を持っていますが、そのポットのすぐ下にあるリゾネーターを留めている訳ではありません。リゾネーターを留めているのは、フランジのすぐ下についているT字型の金具であるブラケットです。次の画像はポットを裏返したものですが、この画像を見ると、ブラケットが、リゾネーターを吊り下げる役目を持っているのと同時にフランジが下にずり下がるのも止めていることがわかります。

 増幅されたバンジョーの音は、さらにリゾネーターに反射して、前に飛び出してくるのですが、この反射板になるリゾネーターは、このブラケットに専用のネジで留められています。これは、ゾネーターがフランジと直接接触しない形で組みつけられているということを意味します。フランジは前述した通りダイキャスト製ですから、フランジ自体にリゾネーターを組み付けられるように成型できた思うのですが、こうした構造になっているのは、どこかに音響的な意味があるのかもしれません。

テンション・フープ
 フックを引っかける溝が入っているものをノッチと言います。材質はフランジと同様です。
 テンションフープにはトップ・テンションというものがあります。

フック
 見ての通りです。ナットも同様です。

こうして見るとバンジョーの音の半分以上を左右するポット側は、個々のパーツが組み合わされた形で構成されているのがよくわかります。

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