チューニング・ペグ

バンジョーのチューニング・ペグはギターのペグなどとは違って、写真のようにまっすぐのままです。
中にギヤが入っていて、ノブで回す回転よりも少ない回転になっているところは、ギターのペグなどと同じです。
このノブはペグ本体にネジで取り付けられているので、交換可能です。ノブにはアイボロイドという人工象牙が使われているものがあり、高級感があります。
色は金色と銀色とあって、フランジなどの金属部分の色にあわせてあります。

ペグ・ヘッドには、木ネジで取り付ける方法のものもありますが、多くは、ワッシャーをかませて、ペグヘッドを挟み込むようにナット締めしてあります。ペグに小さな突起があって、それがペグ・ヘッドに食い込むことで、弦張力によってペグが動くことを防いでいます。
ペグは、ウェーバリー、シャーラー、グローバーなど様々なメーカーが出しています。写真のものはウェーバリーの2バンド・ゴールドと呼ばれるものです。


この写真は5弦ペグです。ネックの中ほどから出ている5弦をチューニングする専用のペグです。これもギヤ式になっています。
5弦ペグは、ネックに穴をあけ、その穴に突っ込んで固定してあります。5弦ペグのノブもネジ止めされており、交換可能です。

5弦は切れ端が演奏中にあたることがあったりするので、切れ端がペグに巻き込まれて行く構造になっている5弦ペグもあります。


バンジョー奏法にはチューナー奏法というユニークな奏法があります。弦を弾きその弦のチューニング・ペグを動かす奏法です。Foggy Mountain Banjoというアルバムの中に入っているアールズ・ブレイクダウンやフリントヒル・スペシャルなどで、アール・スクラッグスの演奏が有名です。
このアルバムでは、アール・スクラッグスは普通のチューニング・ペグでこの奏法を弾いているらしいのですが、チューニング・ペグを動かす奏法なので、どうしてもチューニングが狂います。そこであらかじめ動かす音程の分だけ音程を動かすことができるように工夫されたものがチューナーです。
この写真のようにペグ・ヘッドにとりつけ、弦をチューナーにひっかけ、チューナーのノブを正しい音程のところに調整することで、チューニング・ペグではなく、チューナーのノブを動かすことで同じ効果を得ることができます。またチューニング・ペグを動かさないのでチューニングが狂う心配がありません。
このようにペグヘッドに取り付けるタイプのものには、ペグヘッドに穴を開けて取り付けるものと、この写真のようにペグヘッドを挟み込むタイプのものとあります。

チューナーには、チューニング・ペグと一体になったものもあります。この写真のものがそうです。考案したバンジョー奏者のビル・キースの名前をとって、キース・チューナーと呼ばれています。
このチューナーは、チューニングをしたあと、ペグに付いている片方のネジを締め、その後チューニングを変化させたい音程のところまで動かし、もう一方のネジを締めます。するとネジ締めによってチューニング・ペグのノブを動かせる範囲が固定されて、チューナー奏法が可能になるという画期的なチューナーです。
ペグ・ヘッドに穴をあけたり、ペグ・ヘッドの美しいインレイを隠したりすることがありません。ただ難点は複雑な構造をしているので、ペグの中のギヤが壊れたりすることがあります。
けれども使いやすさやデザイン性など非常に素晴らしいものであることに違いありません。シャーラー社もこのキース・チューナーを製造していますが、ビル・キースの製造しているキース・チューナーはノブのはめ込みが波状になっているので、チューニング後のノブの方向をノブ自体を付け替えることで、いつも同方向にすることができ、チューナー奏法がノブの向きによってまちまちの変化になるということがありません。
本当にビル・キースという人は演奏はもちろんですが、アイデアが豊富な人です。



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